「発明」に該当しないもの

特許法では、第2条第1項に「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定されています。

特許法は「発明」を保護しますが、「発明」ではないものは保護しません。

 

では、「発明」に該当しないものとは、具体的に何でしょうか。

特許庁の審査基準では、以下の類型のものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない、となっています。

(1)自然法則自体
(2)単なる発見であって創作でないもの
(3)自然法則に反するもの
(4)自然法則を利用していないもの
(5)技術的思想でないもの
(6)発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの。

(参考)
特許・実用新案審査基準
第III部 特許要件 第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)(別ウィンドウが開きます)
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tukujitu_kijun/03_0100.pdf

 

◆ メジャーリーガーのダルビッシュ投手が投げているという「ワンシーム」という投球方法は、「発明」に該当するでしょうか。

これは、上記の(5)技術的思想でないもの、特に技能(個人の熟練によって到達し得るものであって、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如しているもの)に該当しますので、「発明」に該当しません。

◆ 最近CMで話題の「斎藤さんゲーム」(1年後には忘れていそうですが)は、「発明」に該当するでしょうか。

これは、上記の(4)自然法則を利用していないもの、特に人為的な取決め(例:ゲームのルールそれ自体)、に該当しますので、「発明」に該当しません。

◆ 下記の「暗記学習用教材」は、「発明」に該当するでしょうか。
【請求項1】
 原文文字列の一部を伏字とすることにより作成された暗記学習用虫食い文字列が表示された暗記学習用教材であって,
 前記暗記学習用虫食い文字列は,
 前記原文文字列を対象として作成され,第1の伏字部分が設けられた第1の虫食い文字列と,
 前記原文文字列を対象として前記第1の虫食い文字列とは別に作成され,第1の伏字部分が設けられた箇所に対応する箇所とは異なる箇所に第2の伏字部分が設けられた第2の虫食い文字列と,を含み,
 前記原文文字列は,この特許出願の出願日において施行されている日本国の著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)第13条各号のいずれかに該当する著作物の一部又は全部を含むものである,
暗記学習用教材。

これは、原告が行った特許出願(特願2012-277387号)について、何ら自然法則を利用したものはなく、「発明」に該当しないものであり、特許法29条1項柱書きに規定される「産業上利用することができる発明」に該当しないとして拒絶審決がなされ、審決取消訴訟が提起された事例です。

文章が虫食いになっている学習用教材は発明に該当するのかが争われました。

裁判所は以下のように判断しました。
・請求項に記載された特許を受けようとする発明に何らかの技術的手段が提示されているとしても,その発明の本質が,人の精神活動,抽象的な概念や人為的な取り決めそれ自体に向けられている場合には,「発明」に該当するとはいえない。

・本願発明の技術的意義は,暗記学習用教材という媒体に表示された暗記すべき事項の暗記学習の方法そのものにあるといえるから,本願発明の本質は,専ら人の精神活動そのものに向けられたものであると認められる。

・本願発明は,その本質が専ら人の精神活動そのものに向けられているものであり,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則,あるいは,これを利用するものではないから,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。

つまり、裁判所は、本願発明を「人の精神活動そのものに向けられたもの」と判断しました。

(参考)
知財高判平成27年1月22日(平成26年(行ケ)第10101号
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/798/084798_hanrei.pdf

 

まだ誰も実行していないことや新たな知見などは、発見者・考案者にとっては大切な「発明」になります。

しかし、特許法による保護を獲得するためには、発明が特許法で規定された「発明」に該当することが大前提になります。

 

ところで、暗記学習用教材に通じるかどうかはわかりませんが、開くと真っ平らになる方眼ノートが話題になっています。

このノートについては、「無線綴じ冊子の製本方法」の特許として登録されました(特願2014-24047、特許5743362)。

特許だけでなく、下記の商標も取得しています(登録5786704)。
TM_DISPLAY_A.cgi
(画像は特許情報プラットフォームより引用)

ちなみに、「水平開きノート」という商標については現在審査中のようです(商願2016-002767)。(7/15追記;本件は平成28年(2016年)6月10日に登録されました。商標登録第5856734号。)

このように、1つの製品を保護する手段として、特許法による保護だけではなく商標法による保護も受けることで、製品を多角的に保護することができます。