特許料等の減免制度~アカデミック・ディスカウントを中心に

特許庁には、特許出願の審査請求料や特許料を減免する減免制度があります。

この減免制度を利用できる減免対象者は以下の者に限られています。
・中小ベンチャー企業・小規模企業等
・個人(所得税非課税者等)
・法人(非課税法人等)
・研究開発型中小企業
・研究開発型中小企業(アジア拠点化推進法)
・アカデミック・ディスカウント
・独立行政法人
・公設試験研究機関
・地方独立行政法人
・承認TLO
・認定TLO
・承認地域経済牽引事業を行う中小企業

但し、軽減措置の期限が決められている減免対象者や、料金が免除となる減免対象者等があります。また、各減免対象者は、対象者に該当するか否かの基準が定められています。詳しくは下記のページをご参照下さい。

(参考)特許庁ウェブサイト 特許料等の減免制度
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/genmensochi.htm

減免対象者に応じて措置内容が異なります。

一例として、
・減免対象者に該当しない企業(以下、単に企業とします)の発明者
・減免対象者に該当する大学(以下、単に大学とします)の研究者
これらの者が共同発明を行い、企業と大学とが共同出願する場合に、大学が減免措置を受けるために必要な要件や手続きを簡単にご説明致します。

まず、この場合に受けられる減免制度は「アカデミック・ディスカウント」です。

軽減措置は、
(1)特許出願の審査請求料が半額軽減になる
(2)特許料(第1年分から第10年分)が半額軽減になる
の2つです。

ここで、「半額軽減」とは、権利の持分に対する割合です。

以下では、特許出願の審査請求料の半額軽減について詳しく説明します。審査請求料の半額軽減に必要な書類は、
・職務発明認定書
・持分証明書
・審査請求料軽減申請書(産業技術力強化法)
です。

<職務発明認定書>
下記の記載例のように記載します。

(画像は特許庁ウェブサイトより引用)

「3.発明者」の欄には、「(1)大学等の研究者(職務発明をした者)」のみを記載しても良いです。つまり、「3.発明者」の欄に「(2)上記以外の者(職務発明以外の者)」の欄を設ける必要は無く、企業の発明者を記載する必要はありません。

もちろん、記載例のように積極的に企業の発明者を記載しても構いません。大学が大学の研究者の職務発明を認定できれば良いですので、大学の情報のみを記載する方が書面としてわかりやすいかと思います。

注意点は、「4.発明をした日」の日付けが、特許出願の出願日よりも前の日付けになっていることです。

最後に、「(証明する者)」の印が必要になります。

職務発明認定書は、審査請求料軽減申請書に添付します。

<持分証明書>
アカデミック・ディスカウントでは、持分証明書の提出が必要です。民法の規定では、権利の持分の取り決めがない場合は1/2ずつになりますが、減免措置を受けるためには、たとえ1/2ずつに取り決めを行っていたとしても書類の提出が必須です。

持分証明書には、出願番号、出願日、発明の名称、特許を受ける権利の持分、出願人の住所・名称・代表者を記載します。例えば、「甲 1/2、乙 1/2」や「甲 50%、乙 50%」というように、持分の割合を記載します。持分証明書には、企業と大学の両者の印が必要です。

通常、出願審査請求書に持分証明書を添付して提出します。

既に出願審査請求書を提出している場合や出願審査請求書をオンラインで提出する場合には、紙の書面の手続補足書あるいは手続補正書に持分証明書の原本を添付して特許庁に郵送します。

手続補足書あるいは手続補正書の【手続補正1】は次のように記載します。

【手続補正1】
  【補正対象書類名】   出願審査請求書
  【補正対象項目名】   提出物件の目録
  【補正方法】      追加
  【補正の内容】
    【提出物件の目録】
      【物件名】   持分について証明する書面

出願審査請求書の書面に、持分証明書を追加するための内容です。

<審査請求料軽減申請書>
審査請求料軽減申請書には、減免対象者を申請人として記載します。注意点は、特許出願は企業と大学との共願ですが、減免制度を利用するのは大学のみです。よって、申請人には大学のみを記載します。

なお、共同出願人の全員が減免制度を利用する者の場合は、申請人には出願人の全員を記載することになります。

審査請求料軽減申請書はオンラインで特許庁に提出することができず、紙の書面に職務発明認定書の原本を添付して特許庁に郵送します。

減免制度では、書類の援用(前回提出した書類を今回の申請に利用する方法)ができるようですが、原則は都度提出する必要があると思って下さい。

(参考)特許庁ウェブサイト 特許料等の減免制度に関するQ&A
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/genmen_faq.htm

企業と大学が上記の申請を行った場合、大学が受けられる減免の効果はどのくらいでしょうか。

企業と大学の権利の持分が1/2ずつの場合、大学は特許出願の審査請求料が半額軽減になりますので、大学が支払う審査請求料は持分に応じた負担額の半額、つまり(持分1/2)×(半額軽減1/2)=1/4になります。

審査請求料が仮に16万円の場合、大学の審査請求料の負担額は、8万円の半額、つまり4万円になります(16万円の1/4)。企業の負担分は8万円ですので、特許庁に支払う審査請求料は8万円+4万円=12万円になります。

極端な話をすると、企業の権利の持分が1/10、大学の権利の持分が9/10の場合、大学の負担額は審査請求料16万円×(持分9/10)×(半額軽減1/2)=7万2千円です。企業の負担額は16万円×(持分1/10)ですので1万6千円です。よって、特許庁に支払う審査請求料は7万2千円+1万6千円=8万8千円になります。権利の持分の割合によっては、審査請求料は約半額になります。

大学が単独で出願した場合にアカデミック・ディスカウントを利用すると、特許出願の審査請求料が半額軽減になりますので、審査請求料は単純に半額になります。上記の例ですと、審査請求料16万円が8万円に減額されます。

特許料についても上記と同じ計算をすることになります。特許料の軽減申請をする場合には、新たに「特許料軽減申請書」の提出が必要になります。

特許庁の減免制度を利用すると、出願のコストを多少なりとも減らすことができます。権利の持分の取り決めがあったとしても、出願審査請求料や特許料を支払うのは企業という場合が多く、減免制度を利用することで企業の負担を減らすことができます。

出願人に減免対象者が含まれる場合には積極的に減免制度をご利用頂ければと思います。


メッセナゴヤ2017

先日、ポートメッセなごやで開催されたメッセナゴヤ2017の次世代自動車フォーラム2017に行ってきました。
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講演内容は、燃料電池自動車と予防安全技術についてでした。来年も興味のあるテーマがあれば参加したいと思います。

さて、自動車産業の未来は、様々なところで客観的あるいは主観的に語られる永遠のテーマですが、世界の自動車市場はどのようになっているのでしょうか。

近年の自動車の市場はアジアが非常に伸びています。特に、中国での自動車販売が伸びた結果であると考えられます。
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(出典:特許行政年次報告書2017年版〈本編〉)

また、自動車の世界市場規模は今後も伸びていくと考えられています。
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(出典:特許行政年次報告書2017年版〈本編〉)

その一つの要因は、IoT(Internet of Things)技術、ビッグデータ、AIが関連する第四次産業革命であると考えられます。自動車に関するIoT関連技術の特許出願は年々増加しています。
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(出典:特許行政年次報告書2017年版〈本編〉)

技術は積み重なって発展していくことを考えると、自動車に関するIoT関連技術は今後も伸びていくはずです。
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(出典:特許行政年次報告書2017年版〈本編〉)

自動車は、インターネットに繋がっていて当たり前、ビッグデータを活用したナビゲーションが当たり前、AIが判断する自動運転が当たり前というように、現在とは全く違う乗り物になっていくと、自分は考えています。

 


一発特許査定は幸運なことなのか、それとも不幸なことなのか

一発特許査定とは、特許出願後、審査請求を行い、審査官による審査が行われ、拒絶の理由が一度も通知されることなく、特許査定がなされることです。

特許出願のほとんどは何かしらの理由を持って拒絶すべきものと判断されますが、特許出願の中には、拒絶の理由が無く、一発特許査定になるものもあります。

一発特許査定になるのは拒絶の理由が存在しないからですが、一度も拒絶理由が通知されないことは幸運なことなのでしょうか。

一度も拒絶の理由が通知されないことに対しては、
「権利範囲を狭く書きすぎた」
「もっと権利範囲を広くできたはず」
「分割出願の機会が失われた」
などの意見があります。

なお、現在では、特許をすべき旨の査定(拒絶査定不服審判におけるものを除く)の謄本の送達があつた日から30日以内に分割出願が可能となり、一発特許査定になった場合でも分割出願を行う機会は確保されています。

つまりは、権利範囲が狭いということが懸念されるわけですが、一度も拒絶理由が通知されないことは果たして不幸なことなのでしょうか。

特許査定については、以下のような統計があります。
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(出典:特許行政年次報告書2017年版〈統計・資料編〉)

2007年ではファーストアクション件数が30万件程度であるのに対し、特許査定件数は14万件程度でした。

2016年ではファーストアクション件数が24万件程度であるのに対し、特許査定件数は19万件程度でした。

年度を挟んだ案件を考慮していませんので、大ざっぱな数字ですが、特許査定の割合は2007年頃よりも2016年は明らかに増加しています。

この統計から、出願人は、特許出願前に関連する技術分野の特許調査を十分に行い、拒絶されにくく妥協はしたくないギリギリの権利範囲を設定して出願している傾向があると推測できます。

出願の権利範囲は事業戦略に合うように、すなわち特許権が取得できなかったら事業が成り立たないということが起こらないように、知財戦略として権利範囲の落とし所も考えて出願していると推測できます。

この傾向は、年々高まってきたのだと考えられます。つまり、事業戦略と知財戦略が合致するように、特許出願がされてきて現在に至るということです。

ファーストアクション件数には拒絶理由通知書(これがほとんどだと思いますが)が含まれていますので、一発特許査定の割合は不明ですが、出願人は拒絶の対応をしたとしても取りたい特許を取りにいっていると言えます。

一発特許査定の場合は権利範囲を減縮補正しなくて済むため、出願時に狙った権利範囲を確保できます。

他方、拒絶理由の通知に対応するということは、補正によって権利範囲を狭くするか、意見書で拒絶の理由を有しない旨の反論をするか、いずれにしても出願人は応答期限までに対応を迫られます。

補正せざるを得ない場合、代理人費用を掛けて、権利範囲を狭くするわけです。意見書で反論する場合も代理人費用が掛かります。(特許庁への支払いは不要です。)

ということで、個人的には、一発特許査定は、事業戦略と知財戦略が合致している場合、出願時に狙った権利範囲をいじることなく、費用も時間も掛けることなく、早期に権利化できるということで、幸運なことだと考えます。

「一発特許査定になったから権利範囲が狭かった」と考えるよりも、「一発特許査定になって狙った権利範囲の特許権を取得できた」と考えるほうが、心のストレスは小さく済むのではと思います。

自分としては、一発特許査定は拒絶理由に対する反論機会がないので弁理士の仕事としては物足りないですが、狙った権利範囲の特許権を一発で取得できたことは良かったことだと思うようにしています。

その一方で、審査請求をした場合に一発拒絶査定というものは無いわけで、拒絶理由の通知があった場合でも、事業戦略と知財戦略に合致した権利範囲の特許を取得できるように対応する機会は必ずあります。

但し、拒絶査定が通知される前に最後の拒絶理由が通知されるか否かは審査官の判断に委ねられており、法律上も運用上も必ず「最後の拒絶理由通知」が通知されると決まっているわけではありません。

結局のところ、事業戦略と知財戦略が合致している場合、一発特許査定は追加の費用も時間も掛からずに狙った権利範囲の特許権を取得できるということで幸運なことだと思います。拒絶理由通知書を受け取ったとしても、落とし所の権利範囲を取得できる機会があるわけですから、不幸なことではないと考えます。


誰が「発明者」になるのか

特許法では、発明者や共同発明者の権利は規定されていますが、「発明者」や「共同発明者」の定義は規定されていません。

一体誰が「発明者」あるいは「共同発明者」になるのでしょうか。

学説では、「発明者とは、当該発明の創作行為に現実に加担した者だけを指す」とされています。

単なる補助者、助言者、資金の提供者あるいは単に命令を下した者は、発明者とはなりません。

「共同発明」の場合は、実質上の協力の有無から共同発明者を判断します。

以下の者は共同発明者ではありません。
(例1)単なる管理者 ・・・ 部下の研究者に対して一般的管理をした者、たとえば、具体的着想を示さず単に通常のテーマを与えた者又は発明の過程において単に一般的な助言・指導を与えた者

(例2)単なる補助者 ・・・ 研究者の指示に従い、単にデータをまとめた者又は実験を行った者

(例3)単なる後援者・委託者 ・・・ 発明者に資金を提供したり、設備利用の便宜を与えることにより、発明の完成を援助した者又は委託した者

また、共同発明の場合、発明の成立過程を、
着想の提供(課題の提供又は課題解決の方向づけ)
着想の具体化
の2段階に分け、各段階について実質上の協力者の有無について次のように判断します。
(例4)提供した着想が新しい場合は、着想(提供)者は発明者になります。ただし、着想者が着想を具体化することなく、そのままこれを公表した場合は、その後、別人がこれを具体化して発明を完成させたとしても、着想者は共同発明者にはなりません。両者間には、一体的・連続的な協力関係がないからです。したがって、この場合は、公知の着想を具体化して発明を完成させた者のみが発明者になります。

(例5)新着想を具体化した者は、その具体化が当業者にとって自明程度のことに属しない限り共同発明者になります。

以上の発明者/共同発明者の認定は、社員が業務を遂行した結果完成させた発明(職務発明)についても同じです。

たとえば、
・社長自らが発明をした場合、社長は発明者になる。
・社長が社員に業務遂行の指示を出し、社員が発明した場合、社員は発明者になるが、社長は発明者にはならない。
・取引相手の担当者から発明のきっかけ(こういう製品が欲しい、など)を与えられ、自社の社員が発明した場合、自社の社員は発明者になるが、取引相手の担当者はあくまで発明のきっかけを与えただけで新規な着想も具体化も行っていないので発明者にはならない。

最後に、発明は人間個人の頭脳から生み出されるものですので、「発明者」は必ず自然人です。

会社などの法人は人間ではありませんので、発明者にはなり得ません。

 


中韓文献の翻訳・検索サービス

最近、特許庁が提示する文献の中に、「CN〇〇〇」という公報番号が目立つようになりました。

この公報番号は、中国特許出願に係る明細書を意味しています。

実際、中国の公報を見てみると、見たことのない漢字がズラリ・・・汗が出てきます。わたくし、中国語に縁が無く、意味を理解できません。

そんな迷える子羊を救ってくれる翻訳サービスが、特許庁から提供されています。それが、「中韓文献 翻訳・検索システム」です。

(参考)
中韓文献 翻訳・検索システム(別ウィンドウが開きます。)
http://www.ckgs.jpo.go.jp/

中韓文献 翻訳・検索システムの「公報テキスト検索」では、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)と同じようにキーワード検索が可能です。

公報番号が分かっている場合は「公報番号索引照会」で検索します。

検索方法は、公報番号を入力番号フォーマットに従って入力し、照合ボタンを押します。検索結果は画面右側に表示されます。(目隠ししています。ご了承下さい。)
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一つの公報を選択すると、中国語または韓国語で公開された公報の内容を日本語に翻訳して表示してくれます。
20160905_2

翻訳の精度については、ニホンゴノイミ・・・ワカラナイ、といった部分はありますが、概要は理解できます。(注;個人の感想です。)

「原文テキスト」のボタンを押すと、中国語あるいは韓国語の原文が表示されます。

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)では、要約の和文を参照することはできますが、中国語や韓国語そのものを翻訳してくれません。

ですので、中国語や韓国語の公報については中韓文献 翻訳・検索システムは大変頼もしいシステムです。

中国での特許出願は年々増加しており、2015年に中国に特許出願された件数は外国出願も含めて100万件を超えました。日本に特許出願された約30万件の3倍以上です。

このような背景を鑑みると、今後は、中国文献を見る機会が非常に増えると思います。出願時の先行文献や拒絶の引例として利用される可能性も高いです。

 


羽根のない扇風機

今年も蒸し暑い季節になりました。

思い起こせば2009年、2010年頃、電気機器メーカであるダイソンから「羽根のない扇風機」が発売されたときには度肝を抜かれました。

新し物好き&’扇風機’が欲しかった自分は直ぐに購入してしまいました。

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さて、ダイソンは羽根のない扇風機について様々な出願を行っています。日本で最も早い出願を調べてみました。

意匠は、平成20年6月6日(2008.6.6)に英国でなされた出願を基礎として日本に優先権主張出願され、平成21年11月20日(2009.11.20)に登録されました。

JPS_001376284_000001(意匠登録1376284)

意匠に係る物品は「送風機」になっています。

特許は、平成20年10月25日(2008.10.25)に英国でされた出願を基礎として日本に優先権主張出願され、平成26年1月17日(2014.1.17)に登録されました。

JPB_005456787_000002(特許5456787の図1)

発明の名称は「扇風機」ですが、特許請求の範囲では「扇風機組立体」となっています。ちなみに、請求項1は以下のようになっています。(請求項の数は全部で14です。)
【請求項1】
  空気の流れを作り出すための扇風機組立体であって、
  ノズルと、
  前記ノズルに接続されるとともに、空気入口と前記ノズルを通して空気流を作り出すための手段とを有する基部と、
  前記空気入口の上流側に前記基部を取り囲むように設けられた、前記空気流から微粒子を除去するためのフィルタと、
  を含み、
  前記ノズルは、内部通路を形成する内壁及び外壁を含み、前記内壁及び前記外壁は、互いに近づくようにループ又は折りたたみ形状で構成されて該内部通路から前記空気流を受け取るための口部を構成し、前記口部は、前記内壁及び前記外壁の間に形成された出口に近いほど狭くなるテーパ付領域を含み、前記ノズルは、該口部に隣接して位置するコアンダ表面を含み、該口部は、該コアンダ表面の上で該空気流を誘導するように配置される、
  ことを特徴とする組立体。

意匠の特徴でもある環状の構造は、請求項10、11に限定されています。
【請求項10】
  前記ノズルは、実質的に環状であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の扇風機組立体。

【請求項11】
  前記ノズルは、少なくとも部分的に円形であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の扇風機組立体。

ダイソンは、初代の扇風機の発売後も意匠や特許の出願・権利化を続けており、しばらくは製品の優位性を維持できて類似品は簡単には出ないだろうな、という印象を持ちました。

(画像は特許情報プラットフォームより引用)

 


特許表示

「特許出願中」や「特許取得済」等のように、製品について特許権を取得しようとしていること、あるいは特許権を取得したことを、製品のパッケージ等に記載しているものがあります。

特許法では、「特許表示を附するように努めなければならない」という規定があります(特許法第187条)。その物が特許権の対象ですよ、と明示することで、権利侵害を未然に防ぐ効果を狙っています。なお、実用新案、意匠、商標についても同じです。

「努めなければならない」とありますように、訓示規定です。特許表示は義務ではなく、違反しても罰則等の制限はありません。

表示方法については、「特許法第187条の特許表示は、物の特許発明にあっては「特許」の文字およびその特許番号とし、物を生産する方法の特許発明にあっては「方法特許」の文字およびその特許番号とする」と具体的に定められています(特許法施行規則第68条)。

つまり、正しい表記は、物の特許発明は「特許第〇〇〇〇号」となり、物を生産する方法の特許発明は「方法特許第〇〇〇〇号」となります。

「特許取得済」や「特許登録済」等の表記は、’法律上’は正しい特許表示ではありませんが、製品について何らかの特許権が取得されていることは分かります。「PAT.」と表記されているものもあります。

なお、「特許出願中」や「特許申請中」等の表記は特許出願を行った状態であり、特許権が付与されているわけではありません。もちろん、特許表示ではありません。

注意点は、特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示やこれと紛らわしい表示を行う等をすると、虚偽表示として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます(特許法第188条、198条)。

特許権者であっても、虚偽表示を行うと罰せられます。

製品のアピールポイントの一つとして、「特許」という文字が需要者に与える印象をどのように利用するかは販売者の考えるところですが、経済的効果を得ようと無茶をすると経済的制裁を受けますので、程々がよろしいかと思います。

 


接触操作型入力装置事件

アップルの携帯型デジタル音楽プレイヤーである『iPod』は広く知られたデバイスですが、それと同時にiPodのリング状の操作パネル(クイックホイール)も広く知られています。

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このiPodの操作パネルについての特許権は、平成10年1月6日に原出願がなされ、平成18年9月15日に設定の登録がされました(特許第3852854号)。

特許の権利範囲は以下のようになっています。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状である軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置されたタッチ位置検知手段と、
接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段と
を有し、
前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡に沿って、前記プッシュスイッチ手段が配置され、かつ、
前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡上における押下により、前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたはオフが行われる
ことを特徴とする接触操作型入力装置。

【請求項2】
請求項1記載の接触操作型入力装置であって、前記プッシュスイッチが4つであることを特徴とする接触操作型入力装置。

【請求項3】
請求項1または請求項2記載の接触操作型入力装置を用いた小型携帯装置。

この特許権に基づき、iPodの輸入差し止めの申し立てがなされ、これに対し、アップルに侵害がないことを確認するための提訴がなされました。さらにこれに反訴するかたちでアップルに対して100億円の損害賠償請求がなされました。

平成25年9月26日、東京地方裁判所はアップルの特許権侵害を認め、約3億3600万円の支払いを命じました(平成19年(ワ)第2525号、第6312号)。判決では、最終的に、「本件各発明の技術が原告各製品に対して寄与する程度は大きくない」と判断されました。

平成26年4月24日、二審の知的財産高等裁判所もアップルの特許権侵害を認めましたが、損害賠償額は変わらずです(平成25年(ネ)第10086号)。

今後、最高裁判所はどのような判断を下すのでしょうか。