商標権の維持費はいくらなのか

商標登録出願し、審査において拒絶理由がなく、商標登録をすべき旨の査定を受け、所定の期間内に特許庁に登録料を納付すると、商標権の設定の登録がなされます。

商標権は、この設定の登録によって発生します。また、商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年をもって終了します。

商標権は、更新の登録の申請を行うことにより、商標権の存続期間を更新できます。更新を続けることによって、半永久的に商標権を維持できます。

よって、特許庁に納付する登録料・更新登録料が、商標権の維持費の主な費用になります。登録料の納付は、10年分の一括納付と、5年分の分割納付を選択できます。

初めて登録する場合
一括納付の場合:区分数×28,200円
分割納付の場合:区分数×16,400円

更新登録する場合
一括納付の場合:区分数×38,800円
分割納付の場合:区分数×22,600円

(参考)特許庁ウェブサイト 産業財産権関係料金一覧(2016年4月1日時点)
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/hyou.htm

具体例として、以下の有名な商標の場合について説明します。
(登録第5747659号)

「anello」は株式会社キャロットカンパニーの登録商標です。

登録日は平成27年3月6日ですので、新料金が適用されます。この商標の区分数は「1」です。

18 かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,皮革製包装用容器,傘,傘カバー,傘用ケース,愛玩動物用被服類

区分の中の指定商品や指定役務の数は、登録料・更新登録料に影響しません。区分の数のみによって登録料・更新登録料が決まります。

よって、初めて登録する場合に特許庁に納付する登録料は、
一括納付の場合:区分数1×28,200円=28,200円
分割納付の場合:区分数1×16,400円=16,400円
となります。実際には、10年の一括納付がなされています。

分割納付の場合、後半5年分も16,400円ですので、10年間で32,800円となり、割高になります。事業やマーケットの成り行きをみたり、短期間のビジネスを考えている場合は5年間の維持で割り切っても良いかと思います。

商標の更新の登録をする場合、平成37年3月6日の6月前から3月6日までに、更新登録の申請を行い、次の更新登録料を特許庁に納付することになります。
一括納付の場合:区分数1×38,800円=38,800円
分割納付の場合:区分数1×22,600円=22,600円

上記の例では、区分数が1ですが、区分数が2、3、・・・と増えていくと、登録料・更新登録料は2倍、3倍、・・・・と増えていきます。

現行法では、区分は45あります。極端な例として、全区分を指定して商標登録を受けた場合、次の登録料を特許庁に納付することになります。
一括納付の場合:区分数45×28,200円=1,269,000円
分割納付の場合:区分数45×16,400円=738,000円

更新登録の場合は、次の更新登録料を特許庁に納付することになります。
一括納付の場合:区分数45×38,800円=1,746,000円
分割納付の場合:区分数45×22,600円=1,017,000円

料金は、以下の特許庁の自動計算システムで簡単に計算できます。
(参考)手続料金自動計算システム(2016年4月1日時点)
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/shutugan.htm

ちなみに、J-PlatPatで全区分を指定した商標を調べてみたところ、たくさんヒットしましたのでいくつかご紹介します。

(登録第4227717号、権利者:ハースト、ホールディングス、インコーポレーテッド、区分数:42)
(区分数は42ですが、出願当時の法区分は42ですので、出願時は全区分指定になります。)


(登録第4906237号、権利者:青山商事株式会社、区分数:45)


(登録第5787972号、権利者:観光庁長官、区分数:45)


(登録第5926542号、権利者:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、区分数:45)


(登録第5926543号、権利者:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、区分数:45)

(商標の画像は特許情報プラットフォームより引用)

全区分の指定は、防護標章登録が非常に多いです。ざっくりと、防護標章登録は、商標登録した指定商品・指定役務以外について、自分は使わないけど、他人が使うと混同を生じると困るので、登録しておく、というものです。

さて、権利を取得することの意義は、商標権に限らず、参入障壁を作ること、事業継続を維持すること、です。

上の「anello」の例ですが、商標権侵害差止等請求訴訟(平成28年(ワ)第8424号)がなされ、商標権の権利者である株式会社キャロットカンパニーが概ね勝訴しています。

(画像は判決文より引用)

商標の類否についての争いはなく、争点は、販売個数と損害額です。原告の請求額に対する裁判所の判断はかなり低くなりましたが、それでも商標権を有しているからこそ、相手方の販売を停止させたり、損害賠償請求できたりします。

裁判が起こらないことが最も良いことですが、裁判を起こしてでも侵害品を排除せざるを得ない場合もあります。それは、商標権を有していればこその効果です。

もちろん、商標権の維持費は掛かります。しかし、他社に利益を取られないことを考えると、安いコストだと思います。

なお、商標権の維持に関し、特許事務所に権利の管理を依頼した場合や、侵害発見のための調査を行う場合などは、特許庁への支払いとは別の料金が発生します。


商標登録表示

商標法では、「その商標にその商標が登録商標である旨の表示を付するように努めなければならない」と規定されています(商標法第73条)。

「努めなければならない」とありますように、訓示規定です。商標登録表示は義務ではなく、違反しても罰則等の制限はありません。

表示方法については、「商標法第73条の商標登録表示は、「登録商標」の文字及びその登録番号又は国際登録の番号とする」と具体的に定められています(商標法施行規則第17条)。よって、法律上の正しい表記は、「登録商標第〇〇〇〇号」となります。

しかしながら、「登録商標第〇〇〇〇号」という表記はあまり見かけません。世の中で多く見かける表示は、「○にR」のマーク(®マーク)です。
20171222_IMG-081420171222_IMG-081520171222_IMG-1041

Rマークは、アメリカ特許商標庁登録商標を表しています。“Registered in U.S. Patent and Trademark Office”若しくは“Reg. U.S.Pat. & Tm. Off.”の意味です。つまり、アメリカで登録されている商標です。もちろん、他の国でも登録されている可能性があります。

(参考)特許庁委託事業 外国産業財産権侵害対策等支援事業 制Q11
http://www.iprsupport-jpo.go.jp/kensaku/apic_html/seido/data/011.html

アメリカでは、Rマークの表示を行わなかったことによって、他人が自分の商標を使用したことによる損害賠償の請求を行うことができなくなります。

日本ではRマークを付することは義務ではありません。但し、登録商標以外の商標について商標登録表示やこれと紛らわしい表示を付する等の行為を行うと、虚偽表示として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されますので(商標法第74条、80条)、注意が必要です。虚偽表示に対する罰則は、多くの国で採用されているようです。

自分が使用している商標が登録商標であることを示す表記としては、Rマークの他に、文章で明記する方式があります。
20171222_IMG-1048

Rマークや文章表記のように、商標が登録商標であることを示すことの最大の効果は商標を普通名称化させないようにすることです。つまり、誰でも使える言葉(識別力の無い語)にしないようにすることです。図形商標も同じです。商標は登録してからの希釈化の防止が重要です。

他方、TMマークやSMマークがあります。

「TM」は、“Trademark”(商品等に付される標章)の略称、「SM」は、“Servicemark”(役務等に付される標章)の略称です。これらのマークもアメリカ特許商標庁において定められたものです。

「TM」や「SM」を使用するための商標登録の必要はありません。出願中であることも必要ありません。さらに、その主張の有効性も担保されません。つまり、商標であることの権利行使もできませんし、マークを付けていたとしても他の商標権者から権利侵害で訴えられる可能性があります。

TMマークの例としては、以下のものがあります。
20171222_TM

オリンピック・パラリンピックの東京2020大会エンブレムにもTMマークが使用されています。(https://tokyo2020.jp/jp/

その他、
LenovoTM (レノボ)
F1TM
AndroidTM (Google)
SupersonicTM (dyson)
などがあります。

商標登録されているものと、TMマークとして用いられているものと、を比較すると面白いです。

レノボ(LenovoTM)の場合、登録商標は、
20171222_4719475(登録第4719475号)
20171222_1299513(国際登録第1299513号)
です。最初の文字が、商標の場合は小文字のエル、TMマークのものは大文字のエルになっています。下の国際登録のものは、文字の太さが違います。

グーグル(AndroidTM )の場合、登録商標は、「ANDROID」(登録第5132404号)です。全て大文字です。TMマークのものは最初の文字が大文字で後に続く文字は全て小文字です。

ダイソン(SupersonicTM )の場合、登録商標は、
20171222_1301389(国際登録第1301389号)
です。商標は全て大文字、TMマークのものは最初の文字が大文字で後に続く文字は全て小文字です。グーグルと同じパターンですね。

図形商標でも、RマークとTMマークを区別しているものがあります。

スターバックスの場合、登録商標は、
20171222_5232548(登録第5232548号)
です。

TMマークがついているものは、図形商標の一部です。
20171222_starbuckstm

このように、RマークとTMマークを使い分けている企業は多々あります。何を商標登録して、何を標章として使用しているのか。その違いを意識して見てみると面白いかと思います。

SMマークの例としては、以下のものがあります。
20171222_SM-1070

やはり、日本では、TMマークは多く見かけても、SMマークは見かけることが少ないです。

(商標の画像は特許情報プラットフォームより引用)


「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」は、どこまでなら回避できるか

「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」は、識別力が無いとして拒絶され、登録できません。

「極めて簡単で、かつ、ありふれた」というのは、例えば、1本の線、ローマ字1字または2字、数字などです。

(参考)特許庁ウェブサイト 商標審査基準 3条1項5号
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyou_kijun/09_3-1-5.pdf

商標審査基準には、「極めて簡単で、かつ、ありふれた」例が記載されていますが、これらの例に該当するかどうかの線引きは実際は難しいです。そこで、特許庁の審判あるいは裁判で判断された例をいくつかご紹介します。

<登録できなかった例>
●本願商標「CQ10」
審決では、
「一般に、欧文字1字又は2字・数字等で組み合わせたものが、商品、役務の品番、等級、質等を表示するための記号・符号として商取引上類型的に採択使用されている実情があり、本願指定役務を取り扱う業界においても例外ではない。」
と判断され、登録できませんでした。(不服2006-009995)

●本願商標「CR-250NN」
審決では、
「欧文字2文字と数字を、「-」(ハイフン)を用いて組み合わせた標章は、一般に商品の規格、型式又は品番等を表示するための記号・符号の一類型として、本願指定商品を含む各種商品について、取引上普通に採択・使用されているのが実情である。」
と判断され、登録できませんでした。(不服2007-006439)

●本願商標「20171208_10019
判決では、
「セリフを持つ書体で欧文字を表すことは一般的に行われており(甲1),欧文字「i」をセリフ書体で表す場合に,縦線部に対して一定の太さを持つセリフにより表すことも通常行われている(乙1~乙3)。また,「i」の上部の点を四角形とすることについても,しばしば行われているといえる(乙3)。さらに,四角形の点と一定の太さのセリフを兼ね備えた書体(例えば,「Memphis」書体。乙3~乙5)も存在する。そして,色彩も,看者をして通常の黄緑色の範囲内であると認識させるものを,単色で用いているにすぎず,本願の指定役務を提供する業界においても,緑色を基調とする色彩は広く用いられている(乙6~乙19)。」
と判示され、登録できませんでした。(知財高判H27(行ケ)10019)

<登録できた例>
○本願商標「N2H2」
審決では、
「本願商標は、前示したとおりローマ文字と算用数字とを交互に配列した構成よりなるものであって、その文字配列は普通に採択され、使用されているものとはいい得ないものであり、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章と判断することはできない。」
と判断され、登録されました。(不服2003-007856)

○本願商標「LJ100」
審決では、
「構成各文字は、同書、同大で外観上まとまりよく一体的に表されているものである。そして、前記のとおり一体的に表された構成態様よりなる「LJ100」の文字が、本願の指定商品の分野において、商品の品番、等級等を表示する記号、符号として、取引上、普通に使用されているという事実も見出せない。」
と判断され、登録されました。(不服2007-009876、登録第511346号)

○本願商標「20171108_005791747
審決では、
「淡い青色の太い線で、角の丸い正三角形を描いたものと認められる。しかして、当該図形を全体としてみるに、太い線で表されている三角形は、その3つの角が、いずれも外側よりも、内側の角が鋭角になるように表されており、外側の角が丸みを帯びていることにより、バランス良く安定した印象を与える一種特有な図形よりなるものとみるのが相当である。また、職権による調査によっても、当該図形が輪郭等として普通に採択、使用されている事実も見出せない。」
と判断され、登録されました。(不服2015-006576、登録第5791747号)

登録できなかったものとしては、総じて、標準文字での出願が多いという印象です。また、品番、形式、規格を表示するための記号や符号であると判断されると登録は難しいようです。

他に、「20171208_20034385」(不服2003-004385)や「20171208_200729718」(不服2007-029718)のように、1文字でも図案化されたものがありますが、図案化の程度が低いとして登録は認められていません。

一方、登録できたものとしては、1文字や2文字だとしても、装飾的であったり、より図案化されたものが多いという印象です。

例えば「20171208_200118341」(不服2001-18341)や「20171208_20046408」(不服2004-006408)は、確かにローマ字1文字ですが、これらのように特殊な図形として認識され、識別標識として機能すると判断されれば、登録は可能なようです。

結局のところ、何が良くて何が駄目なのかは、拒絶無しの登録例、審決例、判例から傾向を見ることになると思います。


モノグラム商標の読み方

2つの文字を組み合わせて図案化したものを「モノグラム」と呼びます。

ルイ・ヴィトンのモノグラム商標がよく知られています。
20171030_1419883(登録第1419883号)

商標が似ているか似ていないかの類否は、外観・称呼・観念の三点観察を基本とします。三点観察の中の称呼は「商標の読み」です。

例えば犬の図形のように、図は明らかに犬を示していたとしても、図の読みができない場合、「称呼が生じない」となります。

では、「V」と「L」を組み合わせたモノグラム商標はどのように読むのでしょうか。

過去の裁判(平成3年(行ケ)91)では、
「複数のローマ字をモノグラム化した構成からは特定の観念を生じることはないとしても、モノグラムとは文字の組み合わせであるから、文字に称呼がある以上、当該商標が複数のローマ字をモノグラム化した構成からなることが一見して明らかな場合にまで、一切称呼が生じないと解することは相当でない。」
と判示しています。

また、この裁判では、上のモノグラム商標を『ヴィーエル』、『ヴイエル』、『ブイエル』、『エルヴィー』、『エルヴイ』、『エルブイ』の称呼が生ずる、と判示しています。

つまり、読める文字で構成されている以上、モノグラム商標は読める、というわけです。

では、下記のモノグラム商標はどのように読むのでしょうか。
20171030_5159867(登録第5159867号)

審決(不服2007-30332)では、
「本願商標は、(略)、「S」の文字の右やや上方に小さく表された「3」の数字は、一般に、乗法における「3乗」と呼ばれる乗数であって、その存在が意味するところは小さくないから、本願商標の構成においてもその存在を無視すべきではなく、かつ、該「3」の数字部分を捨象して観察すべき格別の理由も見出し難いので、本願商標は、かかる構成全体をもって、自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきであり、特定の称呼及び観念は生じないものといわざるを得ない。」
と判断されています。

つまり、読める文字で構成されていても、特定の称呼は生じない、というわけです。

モノグラム商標は読めたり読めなかったりするわけですが、文字の配置を工夫して、特定の称呼を生じさせないようにすることで、出願の拒絶や商標の類似を回避できる可能性があるということです。

(画像は全て特許情報プラットフォームより引用)


音楽的要素のみからなる音商標の登録

平成29年10月2日現在、音商標は172件の登録がありますが、そのほとんどが歌詞付きの音商標です。

例えば、
20171006_5969114(登録第5969114号)
20171006_5938552(登録第5938552号)
などです。(画像は特許情報プラットフォームより引用)

音商標は特許庁のJ-PlatPatで商標公報を開くと再生できます。

先日、特許庁から「音楽的要素のみからなる音商標について初の登録を行いました」なる情報が発表されました。

(参考)
特許庁ウェブサイト
https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/otoshouhyou-hatsutouroku.htm

音楽的要素とは、メロディー、ハーモニー、リズム又はテンポ、音色等をいう、とあります。

つまり、音楽的要素のみからなる音商標とは、歌詞等が付いていない音のみで構成された商標です。

音楽的要素のみからなる音商標として、大幸薬品株式会社、インテル・コーポレーション、BMWの3件の商標が登録されました。

これらは、CM等で流れている音です。CMで音を流す行為や店舗で音を流す行為は、商標の使用の一形態です。

音の商標の出願が可能になってから2年半経っています。歌詞付きの音の商標は登録されてきたものの、歌詞なしの音の商標の審査が続いていたということは、特許庁は歌詞無しの音の商標は歌詞付きの音の商標よりも識別力が弱いと考え、慎重に審査していたからでしょうか。

音は人の生活に溶け込んでおり、繰り返し流れ、人々の意識・無意識に植え付けられていきます。特徴がある(識別力がある)音は、発音時間に関わらず、商品あるいはサービスを十分区別し得るものになると思います。

以前は、テレビや店舗等で音が流れるような状況が多かったですが、現代ではパソコンやスマートフォン等のデバイスでも頻繁に音が流れるようになりました。

そう考えますと、音商標は消費者等への浸透力が強い標識として十分機能するものと考えられます。経験上、店舗で音商標が繰り返し流れると、消費者は知らず知らずのうちに記憶してしまうものです。

音の商標が権利として認められる時代になり、音商標の重要性が今後さらに高まっていくと思われます。


aiwaブランドが復活する!

「aiwa」というブランドをご存じでしょうか。90年代にラジカセやテレビデオ等のAV機器で人気でした。

aiwaブランドを持つアイワ株式会社は2002年にソニー株式会社に吸収合併され、2008年には生産が終了したそうです。

製品は市場から消えましたが、「aiwa」の商標はソニー株式会社が保有し続けていたようです。権利は維持されているが使用されていない、いわゆる休眠商標になっていたようです。

その「aiwa」の商標権が、ソニー株式会社から「アイワ株式会社」に譲渡されました。「アイワ株式会社」は、秋田県に本社を持つ「十和田オーディオ株式会社」が新たに作った会社です。

J-PlatPatで「アイワ株式会社」の商標を検索してみますと、22件ヒットしました。

20170926_2643462(登録第2643462号)
20170926_4690144(登録第4690144号)
(画像は特許情報プラットフォームより引用)

ソニー株式会社が「aiwa」の商標権を消滅させなかった理由はわかりませんが、「aiwa」を消滅させなかったからこそ、「aiwa」が市場に戻ってくることができました。

さて、他人の商標を使いたい場合の対応策として、おおまかに、
(1)ライセンス契約(使用権の設定、移転)
(2)商標権の譲渡(権利の移転)
(3)他人の商標権を取り消して自ら出願する
があります。

下の統計にありますように、2016年では、商標権の譲渡(権利の移転)は2万件以上、ライセンス契約(使用権の設定、移転)は200件程度ありました。有償・無償の区別まではわかりません。
20170926_3
(出典:特許行政年次報告書2017年版〈統計・資料編〉)

2万件の商標権の譲渡を多いとみるか少ないとみるか、です。

比較対象を(3)としますと、2016年の取消審判は969件、平均審理期間は6.4ヶ月でした。

仮に商標を取り消すことができて、出願し直した場合、審査期間が6ヶ月程度になります。他人の商標を取り消して出願し直すと、費用と時間がかなり掛かります。

また、取消審判は、審判請求するための条件を満たす必要があり、権利者に正当な理由がある場合などは取り消すことはできません。

一方、ライセンス契約や商標権の譲渡は、交渉次第ですが、比較的短期間で合意可能です。費用に関しては交渉内容次第でしょうか。もちろん、交渉が決裂する場合もあるかと思います。

他人の商標権を取り消すよりは、権利の移転のほうが商標権の流通性が断然高い、ということです。

ブランドの再構築か、それとも新構築になるのか。今後発売される「aiwa」の製品が気になるところです。


家紋からなる商標登録出願の取扱い

特許庁が「家紋からなる商標登録出願の取扱い」を商標審査便覧に追加しました。

(参考)
特許庁ウェブサイト
42.107 第4条第1項第7号 42.107.06 家紋からなる商標登録出願の取扱い
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyoubin/42_107_06.pdf

家紋の商標については、特許庁は伝統的な家紋(戦国時代の武家の家紋、神紋、社紋、寺紋、宗紋等2)を対象に審査する、とのことです。
(2 神紋、社紋、寺紋及び宗紋は、通常は家紋とは異なるものとして定義されているが、本取扱いでは便宜上家紋の一種として取り扱う)

理由は、結論だけ引用しますと、「伝統的な家紋と関係ない第三者が商標登録を受け、独占的に使用することは社会公共の利益に反し、社会の一般道徳観念に反するため適当ではない。」とのことです。

ウィキペディアによると、戦国時代は15世紀末から16世紀末にかけて戦乱が頻発した時代区分とのことです。また、家紋は平安時代(794年から1192年頃)から公家によって使われ始めたとあり、戦国時代前から使われている家紋もあるようです。

戦国時代を除いた時代の家紋等はどういう取扱いになるのでしょうか。これまで通り、識別力さえあれば第三者が商標登録を受けて独占的に使用しても構わない、となるのでしょうか。

伝統的な家紋等の線引きが非常に難しいのではないかと思いました。


商標は出願してから何日で登録可能か

商標は、特許とは異なり、出願後に審査請求しなくても順次審査されていきます。

特許庁からは、審査の順番が定期的に発表されています。

(参考)
特許庁ウェブサイト
商標登録出願に関する審査着手予定等
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/cyakusyu.htm

例えば、指定商品が食品に関する出願の場合、平成29年1月に出願されたものは、平成29年7月に着手予定となります。

大まかに、出願してから約6ヶ月で審査されると示されています。

実際には、下記の表にありますように、出願から審査官による審査結果の最初の通知が発送されるまでの期間は、年平均で4~5ヶ月程度となっております。
20170808_1
(出典:特許行政年次報告書2017年版〈統計・資料編〉)

統計によりますと、最初の通知が登録査定の通知の場合、出願から4~5ヶ月で登録可能となっています。

一方、最初の通知が拒絶理由通知書の場合、特許庁に手続補正書や意見書を提出する等の対応を行うため、登録までさらに2ヶ月前後の時間が掛かります。

発表されている統計は年平均ですので、出願から最初の通知まで3ヶ月程度の場合もあります。登録までの期間は案件毎に異なるため、実際に処理してみないとわかりません。

ところで、他人が自己の未出願の商標を使用している場合、他人の行為を中止させることができません。

このような場合、自己の商標の早期権利化が望ましいわけですが、特許庁では商標登録出願について一定条件を満たす場合は早期審査を実施しています。

(参考)
特許庁ウェブサイト
商標早期審査・早期審理の概要
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/shkouhou.htm

2016年では、2210件の早期審査の申出があり、申出から審査官による審査結果の最初の通知が発送されるまでの期間は平均で1.8ヶ月でした。
20170808_2
(出典:特許行政年次報告書2017年版〈統計・資料編〉)

早期審査の申出により、商標登録出願の審査期間はさらに短くなります。早期審査は条件をクリアする必要がありますが、早期権利化の有効な手段です。

なお、早期審査は出願済みの商標についても対象になっていますが、近年認められた新しいタイプの商標(動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標) については早期審査の対象外です。


商標権の存続期間は何故10年なのか

商標法では、商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年を持って終了する、と規定されています。

日本ではこれが基本です。

まず、商標権の存続期間は、特許権、実用新案権、意匠権の存続期間との本質的な意味の違いがあります。

簡単に言うと、特許権等については、権利者の独占期間と技術等の解放時期とのバランスを取っている、ということです。

一方、商標権については、長年商標に蓄積された信用を保護するためにはそもそも存続期間を設定する必要がないけれど、使用されない商標が大量にあっても困るから、存続期間を10年に区切って、必要なら存続期間を何回でも更新できる、ということです。

法律の解説では、「10年」という数字の意味までは明確にされていません。

半永久使用を想定すると、一人の人間の経済活動期間は数十年ですが、企業の経済活動期間は(可能であれば)永久に存続することを考えると、「10年」の区切りは妥当なようにも思えます。

法制定時、商品・サービスのライフサイクルも10年単位で変化していたのかもしれません。

従いまして、何故10年なのかと問うてみたものの、結論としては制度がそうなっているから、としか言えなくてすみません。

なお、日本が加盟している商標の国際条約(マドリッド協定議定書や商標法条約)でも商標の存続期間は10年となっています。

さて、長らく存続期間は「10年」でしたが、平成8年から登録料を前半5年分と後半5年分とに分割納付することが可能になりました。

商標権の設定の登録時に、登録料の前半5年分を支払うと、5年後に登録料の後半分の支払いすなわち商標権を更新するか否かを選択できるようになったのです。

この制度は、短ライフサイクル製品について商標権維持の要否を権利者にチェックさせたり、登録料を安くしたりするために導入されました。

登録料が安くなるのは、前半5年分だけ商標権を維持して後半5年分は登録料を納付しない場合ですので注意が必要です。

10年分の登録料の一括納付は、「28,200円×区分数」ですが、分割の分納額は5年分が「区分数×16,400円」です。

分割納付は10年分を支払うと一括納付よりも割高ですが、最初の5年分を支払って更新しないとするならば割安です。

ですので、5年毎の権利維持の選択権を買うか、最初から10年分を一括納付するかの選択が可能になっています。

ところで、特許庁には、中小企業から登録商標を1年毎に更新できるようにして欲しいという要望もあるようです。

「1年」という期間は半永久使用を可能とする商標制度では非常に短い期間です。

ここからは個人的な考察ですが、このような要望は、対象が超短期ライフサイクル製品であることと、商標権維持のコストを安くしたいということだと思いますが、超短期ライフサイクル製品についてはそもそも特許権等も含めて権利化が必須とは思いません。

例えばペーパークラフトのような製品の場合、毎年新しいデザインやネーミング等で売られ、季節モノもあり、そもそも権利化が間に合わない。模倣の被害もあるようですが、短期間で次の製品が発売されるため、いたちごっこが続くようです。

このような超短期ライフサイクル製品について、1年間、商標を維持する意味を考えたとき、権利消滅後に商標権の存続期間における損害賠償を請求することくらいです。しかも、非常に短期間の売り上げに対しての損害賠償請求です。費用対効果を考えると、割高になるかもしれません。

しかも、現在の分割納付でさえ一括納付よりも割高です。1年更新という制度が導入されたら、1年毎の更新料は現在の分割納付に対しても非常に割高に設定されるのではないでしょうか。

権利者も特許庁も手続き処理が増え、両者ともコストが上がり、全員が疲弊します。

1年更新の願望を特許庁に訴えるよりも、現在の商標制度は10年単位あるいは5年単位で更新を認めていますので、これらの更新期間を上手く利用してビジネスするほうが得策です。


色彩のみからなる商標の登録、始まる。(続き)

「色彩のみからなる商標の登録、始まる。」の続きです。

様々な出願の中から業種毎にピックアップして紹介しています。

今回は、小売系の会社です。

イオン株式会社
20170519_イオン_商願2015-029878商願2015-029878
この色を見るとイオンが想像できます。相当浸透しているのでは。
他に2件出願しています。

株式会社カインズ
20170519_カインズ_商願2015-029909商願2015-029909

アスクル株式会社
20170519_アスクル_商願2015-030159商願2015-030159
色は、青色(プロセスカラーの組合せ:C100%,M80%,Y0%,K0%)のみからなるもの、です。

ロイヤルホームセンター株式会社
20170519_ロイヤルホームセンター_商願2015-036575商願2015-036575

京都錦市場商店街振興組合
20170519_京都錦市場_商願2015-038054商願2015-038054
錦市場のラインがこの3色の繰り返しで表現されているようです。

株式会社良品計画
20170519_良品計画_商願2015-043554商願2015-043554

株式会社ローソン
20170519_ローソン_商願2015-059866商願2015-059866
看板の色ですね。他に2件出願しています。

株式会社ビームス
20170519_株式会社ビームス_商願2015-054378商願2015-054378
オレンジといえばビームス、というのは浸透しているのではないでしょうか。

株式会社ドンキホーテホールディングス
20170519_ドンキホーテ_商願2015-065316商願2015-065316
おなじみの黒黄の縞模様です。

株式会社ピーチ・ジョン
20170519_ピーチ・ジョン_商願2015-096336商願2015-096336

各店舗は、それぞれ出願されているような象徴的な色で構成されていることが多いかと思います。

色の商標の出願はその他にも多々あります。もし余力があれば(汗)、他の業種についてもまとめてみたいと思います。


色彩のみからなる商標の登録、始まる。

平成27年(2015年)4月1日から出願が可能になった「色彩のみからなる商標」が、先月初めて登録されたとニュースになりました。

これまでに427件(平成29年4月20日現在)が出願され、2件が登録されました。

商標は、出願後、概ね半年ほどで判断結果が出ますが、色彩のみからなる商標の判断には2年掛かっています。

一つは、平成29年3月10日に登録された株式会社トンボ鉛筆の商標です。
20170420_トンボ鉛筆_登録5930334登録5930334

もう一つは、平成29年3月17日に登録された株式会社セブン-イレブン・ジャパンの商標です。
20170420_セブン-イレブン・ジャパン_登録5933289登録5933289

これらの各出願の「商標の詳細な説明」には、色彩の組合せや配色が数値等で事細かく記載されています。訴訟に発展した際には、商標の類似はどのように判断されるのか、気になるところです。

さて、商標登録の判断は特許庁にお任せするとして、出願人がどのような色彩、色彩の組み合わせ、配色に識別力があると考えて出願しているのか、非常に興味深いところです。

そこで、どんな会社がどんな色を商標として出願しているのか調べてみました。

まず、製薬系の会社です。

久光製薬株式会社
20170420_久光製薬_商願2015-029831商願2015-029831
これは「サロンパス」の色ですね。
久光製薬は、新しいタイプの商標として音商標(登録5804299)も取得しています。

大幸薬品株式会社
20170420_大幸薬品_商願2015-029858商願2015-029858
「正露丸」の色でしょうか。
他に1件出願しています。

ユースキン製薬株式会社
20170420_ユースキン製薬_商願2015-029985商願2015-029985
「ユースキン」の色でしょう。
他に4件出願しています。

株式会社コクミン
20170420_コクミン_商願2015-030024商願2015-030024
ドラッグストアの色です。
第35類を指定し、小売等役務商標として出願しています。

大塚製薬株式会社
20170420_大塚製薬_商願2015-030115商願2015-030115
商品「ポカリスエット」の色かと思います。
他に1件出願しています。

株式会社大塚製薬工場
20170420_大塚製薬工場_商願2015-03028商願2015-03028
これは「オロナインH軟膏」の色ですね。
他に2件出願しています。

大鵬薬品工業株式会社
20170420_大鵬薬品_商願2015-035615商願2015-035615
これは「ソルマック」の色かと思います。
他に1件出願しています。

全薬工業株式会社
20170420_全薬工業_商願2015-040785商願2015-040785
これは「ジキニンC」という風邪薬のパッケージの色かと思います。
他に5件出願しています。

武田薬品工業株式会社
20170420_武田薬品_商願2015-040818商願2015-040818
これは「アリナミン」の薬剤や栄養ドリンクの色かと思います。
他に、非常によく似た色で1件出願しています。

興和株式会社
20170420_興和_商願2015-048327商願2015-048327
これは胃腸薬「キャベジン」の色ですね。
他に2件出願しています。

株式会社和漢薬研究所
20170420_和漢薬_商願2015-084760商願2015-084760
これは「松寿仙」という商品のパッケージに使われているそうです。

健栄製薬株式会社
20170420_健栄製薬_商願2015-122948商願2015-122948
これは「手ピカジェル」という商品のポンプ部分の色かと思います。
他に3件出願しています。

通常、医薬品は箱で売られており、色や配色で差別化を図っている場合が多いため、箱に使用されている色の商標が多く出願されているようです。

他の会社については次回ご紹介します。

(画像は全て特許情報プラットフォームより引用)


商標権の取得前にできること

ピコ太郎さんの「PPAP」が他人によって商標登録出願されたというニュースが盛んに流れています。

なので、今更ながら、他人が出願できるのか、登録されるのか、といった内容は他の方の解説に任せ、ここでは別のことに食いついてみようと思います。

その別のこととは、出願人が音楽会社に「警告を行った」という点です。

そもそも論ですが、権利を持っていない状態で警告ができるのか??

警告自体はどうぞご自由に気の済むまで、限度を越えたら返り討ちにされるかもしれませんが、といったところです。何に基づいて警告を発するかはその人の自由です。

では、産業財産権の世界では、「警告」とは何でしょうか。

特許法や商標法では「警告」という言葉が登場する制度があります。

その制度が「金銭的請求権」(特許の場合は「補償金請求権」)です。

商標の世界では、出願から権利取得までの間に商標に化体した業務上の信用が害されたら出願人の業務上の信用を補塡するために金銭的請求権を認めています。

特許の世界では、出願後1年半経過すると発明の内容が公開され、誰でも実施可能になるので、第三者に自分の発明を実施された場合に出願人の損失を塡補するために補償金請求権を認めましょう、というわけです。

出願人は、未だ権利を取得していない状態でも上記の制度を利用して第三者に「警告」することができます。

そして、一定の要件を満たせば、相手方から金銭の支払いを受けることができます。ただし、金銭的請求権は商標の設定登録後に請求可能ですので、商標権を取得できなかった場合はもちろん請求はできません。

「一定の要件を満たせば」とありますが、ここ大事です。テストに出ます(笑)。

商標の金銭的請求権が認められるためには、大まかに次の要件を満たす必要があります。
(1)出願後、出願の内容を記載した書面を提示して警告をしたこと
(2)警告を受けた者が警告後商標権の設定登録の前に指定商品等について商標を使用したこと
(3)警告を受けた者の商標の使用により出願人に業務上の損失が発生したこと

「PPAP」の件では、(3)の「業務上の損失」が発生していないことが明らかですので、仮に出願人が「PPAP」について商標権を取得したとしても、金銭的請求権は発生しないでしょう。

なので、金銭的請求権の要件の観点からは、出願人の行動は意味がない、と見えます。まあ、出願人本人は金銭を受け取る算段を何か考えているのでしょうけど。

ということで、出願人が権利取得までの間に損失が発生する事態が生じても、泣き寝入りせずにその損失を取り戻せる制度が備わっていますよ、ということです。

逆に、警告を受けたとしても、その警告が正当なものであるのかをしっかり精査すれば怖くないですよ、ということです。

制度としては、正当な権利あっての「警告」です。

(参考その1)
商願2016-108551(出願日2016/10/05) 出願人:ベストライセンス株式会社
商願2016-112676(出願日2016/10/14) 出願人:エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社
商願2016-128344(出願日2016/11/15) 出願人:ベストライセンス株式会社
商願2016-134012(出願日2016/11/28)出願人:ベストライセンス株式会社

(参考その2)
自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
特許庁ウェブサイト
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/tanin_shutsugan.htm

 


家紋の商標その2

前回の記事では家紋の商標について書きましたが、家紋あるいは家紋によく似たものが多数登録されているとはつゆしらず・・・そこで家紋によく似た商標を調べてみました。

家紋をモチーフにした商標はたくさんありますので、ごく一部をご紹介します。
(画像は全て特許情報プラットフォームより引用)

~~葵系~~
20161118_1_5547306(登録5547306,登録5588846,登録566995)
権利者:公益財団法人徳川ミュージアム

前回の記事の異議申立人(異議申立2016-900059)です。前回記事の商標とよく似ています。

出願継続中の商標(商願2015-073258,商願2015-095364,商願2016-028039)もあります。

~~桐系~~
20161118_2_5158364(登録5158364,登録5270491)
権利者:国立大学法人 筑波大学

20161118_3_2016-090111(商願2016-090111)
出願人:日本土地家屋調査士会連合会

20161118_4_1448043(登録1448043)
日本弁理士会も商標権を取得していました。

~~笹系~~
20161118_5_4178031(登録4178031,登録0844071)
権利者:株式会社竺仙

~~桃系~~
20161118_6_4898590(登録4898590)
権利者:株式会社桃太郎

~~枡系~~
20161118_7_3262166(登録3262166)
権利者:三井生命保険株式会社

~~瓜系~~
20161118_8_3170357(登録3170357)
権利者:有限会社元祖大村角ずしやまと
織田瓜に似ています。

~~六文銭系~~
20161118_9_5816475(登録5816475)
権利者:全国農業協同組合連合会
真田六文銭に似ています。

自分の家の家紋が「丸に違い鷹の羽」ですので、その家紋の商標があるかも調べてみました。
20161118_10_5764987(登録5764987)
権利者:有限会社吾作
家紋そのものではなく、文字と家紋との結合商標がありました。

以上のように、家紋に関する商標はたくさん出願・登録されています。

家紋によく似た商標を調べていて思ったことは、家紋そのものを主体とした構成では多少の変更があっても類似と判断される可能性が高い、ということです。

ですので、家紋あるいは家紋によく似た商標を取得したければ、いち早く出願し、権利化し、維持することが大事です。


家紋の商標

先日、水戸徳川家の家紋に似た商標が登録され、この商標登録に対して登録異議の申立てがされている、というインターネットニュースを読みました。

そこで、登録されたという商標を調べてみました。

商標出願番号は2015-018025、登録番号は商標登録第5810969号です。平成27年2月27日に出願され、平成27年12月4日に登録されました。
20161109
商標は確かに葵の家紋に似ています。
(画像は特許情報プラットフォームより引用)

指定商品又は指定役務は、
第21類  お守り,御札,護符
第33類  日本酒
第41類  映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,大神楽の上演,放送番組の制作,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,楽器の貸与
に指定されています。

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で審査経緯を参照しますと、第4条各号、第8条1項、第4条1項11号が拒絶理由となっており、先に出願された他人の同一商標・類似商標が存在することもわかります。

商標法では、ざっくりと以下の商標は登録できないことになっています。
1.自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
2.公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
3.他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

もし、上の商標に問題があるとすれば、公益性に反するかどうかです。

しかし、家紋に公益性があるという話は聞いたことがありません。むしろ、どの家がどの紋を家紋とするかは自由に決めることができる、という話を聞いたことがあります。

あくまで個人的な印象ですが、指定商品又は指定役務を減縮する補正があったとしても、登録は維持されるのではないかと思います。異議申立ての主張は厳しいのではないかと思います。

今後、異議申立でどのような判断が下されるのか、気になるところです。

商標登録は早い者勝ちです。商標は、特許・実用新案や意匠とは異なり、登録料を納付し続ける限り、半永久的に権利を維持できます。

たとえ、本家であったとしても、他人に権利を取得される可能性は大いにあります。他人に商標を登録されたくなかったら、いち早く出願して権利化すべきなのです。

また、他人の市場への参入を阻止するためにも、権利を持つことが大事です。


商標法の標準文字制度

商標法には、「標準文字」で商標登録可能な制度があります。

「標準文字制度」とは、
「登録を求める対象としての商標が文字のみにより構成される場合において、出願人が特別の態様について権利要求をしないときは、出願人の意思表示に基づき、商標登録を受けようとする商標を願書に記載するだけで、特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体(標準文字)によるものをその商標の表示態様として公表し及び登録する制度」
です。

簡単に説明しますと、商標が文字のみから構成される場合、特許庁長官があらかじめ定めた文字書体によって商標を登録する制度です。平成8年改正商標法(平成9年4月1日施行)において採用されました。

願書に商標を記載しますので、特許庁としては事務処理の効率化が図られ、出願人としては手続負担の軽減が図られる、ということで、手続き的に両者にメリットがありますよ、という制度です。

この標準文字につきまして、平成28年9月23日に、新しい標準文字が指定され、「特許庁公報(公示号9)(平成28年9月23日発行)」に掲載されました。当該指定は、平成29年1月1日から適用されます。

(参考)
特許庁ウェブサイト
商標法第5条第3項に規定する標準文字の指定について (PDF:3,607KB)
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/files/youhyou_5_3/00.pdf
(別ウィンドウが開きます。)

出願の際には、願書に「【標準文字】」の記載が必要になります。

ただし、商標審査基準では、標準文字による出願とは認められない商標の記載例として
(イ) 図形のみの商標、図形と文字の結合商標
(ロ) 指定文字以外の文字を含む商標
(ハ) 文字数の制限30文字を超える文字数(スペースも文字数に加える。) からなる商標
(ニ) 縦書きの商標、2段以上の構成からなる商標
(ホ) ポイントの異なる文字を含む商標
(ヘ) 色彩を付した商標
(ト) 文字の一部が図形的に、又は異なる書体で記載されている商標
(チ) 花文字等特殊文字、草書体等特殊書体等で記載された商標
(リ) 上記(イ)ないし(チ)以外のものであって、記載文字が容易に特定できない商標
が挙げられていますので、注意が必要です。

標準文字を利用して出願・登録された商標は数多くありますが、その中には、

東京ディズニーランド(登録5460985)
東京ディズニーシー(登録5460986)
東京ディズニーリゾート(登録5460987)

もあります。

これらは、いずれも標準文字として平成18年(2006)7月31日に同日出願され、平成24年(2012)1月6日に同日に登録されています。

ライセンス管理を行っているDisney Enterprises, Inc.(ディズニー・エンタープライゼズ・インク)が権利者として登録されています。

また、標準文字制度を利用して登録された商標の権利範囲についても注意が必要です。

文字で商標登録されますが、商標を示した文字が全て権利範囲に含まれるとは限りません。図形の商標には権利範囲が及びません

実際に使用している文字が図形(ロゴ)としてデザインされたものであれば、まずは図形商標として商標登録を行うべきです。

図形商標の権利化によって自分の商標の使用を確保するとともに、他人の同一または類似の商標を排除できます。

さらに、標準文字制度を利用して文字だけの商標登録を行うことで、文字だけで構成された同一または類似の商標の便乗使用を排除できます。

ただし、文字だけが非類似の図形商標として使用された場合には、商標が同一または類似していない可能性があり、排除は難しいかもしれません。

標準文字制度は完全に万能ではありませんが、とりあえず文字だけで商標登録を行う場合など、メリットの方が大きい制度です。