ほっとレモン

平成25年8月28日に「ほっとレモン」についての知財高裁の判決が出ました(平成24年(行ケ)第10352号)。

本件商標は、指定商品は第32類「レモンを加味した清涼飲料,レモンを加味した果実飲料」で、手続きの経緯は以下の通りです。

平成21年12月 1日 商標出願(商願2009-90724)
平成23年 7月22日 商標登録(登録第5427470号)
平成23年10月21日 異議申立
平成24年 9月 4日 取消決定

判決では、商標法3条1項3号(商品の・・・品質,原材料・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)に該当すると認定した上で、商標法3条2項については、「商品の出所識別機能を有するに至ったとすることはできない。」として、適用を否定しています。

そして、「ほっとレモン」のうち「ほっと」の部分について、
「・・・③『ホットレモン』との語が,レモン果汁を入れた温かい飲料又はレモン風味の味付けをした温かい飲料を意味するものとして定着していると認められること,
④平仮名『ほっと』については,本件商標の指定商品を含む清涼飲料・果実飲料においては,『ほっとドリンクゆず』,『ほっとカシス』,『ほっとりんご』,『ほっとアセロラ』,『ほっと金柑』,『ほっと梅』,『ほっとアップル』,『ほっとゼリー』,『ほっとゆずれもん』,『ほっとグレープフルーツ』が販売され,『ほっと』と『果物等の素材』とを組み合わせた文字は,当該商品が果物等の素材を原材料とし,あるいは加味した,温かい清涼飲料・果実飲料であることを示す語として普通に使用されていることから,需要者は,上記のように認識,理解していると解するのが合理的であること,・・・」と認定しています。


筋力トレーニング方法

平成25年8月28日に「筋力トレーニング方法」についての知財高裁の判決がでました(平成24年(行ケ)第10400号)。

結論としては、特許権(特許第2670421号)は有効ということです。

ちなみに、請求項1は以下の内容となっています。

【請求項1】
筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位に巻付け、その緊締具の周の長さを減少させ、筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ、もって筋肉の増大を図る筋肉トレーニング方法であって、
筋肉に疲労を生じさせるために筋肉に与える負荷が、筋肉に流れる血流を阻害するものである筋力トレーニング方法。

この訴訟では発明の成立性(特許法2条1項)についても争われており、この点について判決では、「本件発明は,緊締具の周の長さを減少させ,筋肉に流れる血流の阻害とそれに対する生理反応を利用するものであって,生理反応は自然法則に基くものであるから,発明全体として自然法則を利用しているというべきである。」とされています。


高品質な明細書を書きたい(最終回)

第1回はこちら第2回はこちら

小生が判例「海苔製造装置事件/平成10(行ケ)328号」から学んだことは、「せっかく明細書中に発明のバリエーションを記載するなら、意味のある書き方にしなければいけない」ということです。

特許の明細書には、「Aとして、aやbを採用してもよい。」という感じにバリエーションが記載されています。そして、拒絶理由が通知された際に、これを根拠に請求項の構成Aをaに限定補正して権利化を図ろうとすることがあります。

そんな限定補正に対して、「aを採用してもよいと記載されているが、採用するための具体的手段が記載されていないから実施可能要件違反である」と指摘されては、バリエーションを記載した意味が半減してしまいます。

もちろん、バリエーションを記載すること意味は他にもありますが、せっかく、バリエーションとしてaを記載するなら、「Aとして、aを採用してもよい。具体的には、○○とすればaを採用できる。さらに、aを採用することで△△という効果を得ることもできる。」というレベルまで記載するように心掛けることで、後から実施可能要件違反を指摘されることも少なくなると考えます。


高品質な明細書を書きたい(第2回)

第1回はこちら

◆今回ご紹介する参考資料◆

判例「海苔製造装置事件/平成10(行ケ)328号

この判例は実施可能要件について判断されており、無効審判時に特許庁では「実施可能要件違反なし」としましたが、裁判所では特許庁の判断は誤りとしました。争点は、本件発明1に記載された乾燥室チェーンと搬送チェーンとを同じ回数だけ間欠搬送作動させるための具体的実現手段が明細書中に記載されているか否かです。

まずは、判例をご覧になって下さい(特に、「第5 当裁判所の判断」の「2 取消事由2」以降)。

如何でしょうか?

例によりまして、小生の正直な感想を述べますと「確かにそのための実現手段は明細書中に記載されていないという点で、裁判所の判断は妥当だと思う。しかし、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、その実現手段は容易に実現できるものかもしれない。」でした。

次回(来週金曜日予定)は、小生がこの判例から学んだことを述べたいと思います。


高品質な明細書を書きたい(第1回)

『年始のご挨拶』では、長い文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。ズバリ!「長過ぎ」と不評でしたので、今回から短くします。

さて、前回は、お客様に「高品質な特許明細書」を提供する第一歩として、小生が「補足説明を要することなく、記載された内容だけで、誰もが発明の内容を明確に理解できる特許明細書」を書けるようになりたいと思っており、そのために、「自信の無いときは、信頼できる仲間に相談する」ように心掛けていることを紹介させて頂きました。

まぁ、前回紹介させて頂いた心掛けは周囲に信頼できる仲間がいるという恵まれた環境でお仕事をさせて頂いている小生の他力本願的心掛けです。そこで、今回は、自分一人でできる心掛けを参考資料とともに紹介させて頂きます。

◆今回ご紹介する参考資料◆・・・・・第2回へ続く。今回は短いですよね?


年始のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

今年も多くの方々から年賀はがき、年賀メール、さらには年賀ツイートと様々な形で年始のご挨拶を頂戴し、誠にありがとうございました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。今年もどうぞよろしくお願いします。

さて、知的財産業界で特許の明細書を作成する代書屋稼業を生業にしておりますと、お客様や関係者の皆様から頂く年始のご挨拶に、明細書の品質についてお誉めの言葉を添えて頂けることがあります。職人気取りの代書屋と致しましては、このようなお誉めの言葉はお世辞と判っていてもとても嬉しいです。

今年も、お客様や関係者の皆様にご満足頂ける「高品質な明細書」をご提供できるように、誠心誠意、明細書を書かせて頂きたいと思っております。…と、毎年ご挨拶させて頂くのですが、実は小生には「高品質な明細書」がどのような明細書であるかを定義することができません。「高品質な明細書」という言葉は聞こえは良いが意味不明の実に都合のよい言葉なのだと思います。

そこで、今回は、小生が明細書を書く際に心掛けていることを参考資料とともに紹介させて頂きます。もちろん、小生が心掛けていることがそのまま「高品質な明細書」に直結するとは思っておりませんが、このような資料を題材として「高品質な明細書」とはどのような明細書なのかについて多くの方々と議論できれば幸いです。

◆今回ご紹介する参考資料◆

判例「育苗ポット事件/平成15(ワ)889号

比較的有名な判例ですし、判例や明細書の内容は、ご覧頂ければ簡単にご理解頂けると思いますので、ここでは詳細説明を割愛させて頂きます。

まず、判例の第1発明、第2発明をご覧下さい。如何でしょうか?小生の正直な感想は「技術的な内容は何となく理解できるんだけど、権利範囲が曖昧だなぁ(発明不明確?)」でした。次に、第1発明、第2発明の技術的な意義を確認するために明細書を読んで下さい。如何でしょうか?小生の正直な感想は「第2発明って実施形態中の何処に書いてあるんだろう(サポート違反?)」でした。(※当該判例でも第2発明のサポート違反は指摘されています。)

しかし、第1、第2発明のいずれも特許庁の審査を経て特許された特許発明であります。特に、第2発明については分割出願であったことを考慮すると、多くの関係者が議論した末に特許されたのだと思います。つまり、第2発明については発明者サイドがある程度の補足説明をしたことによって、審査官サイドが「第2発明は明確であり、明細書にサポートされた発明である」と納得できるものだったのだと思います。従って、ここでは審査段階での記載不備の判断について意見を述べることは致しません。

小生がこの資料から学んだことは、「特許の明細書は、補足説明を要することなく、その明細書に記載された内容だけで、誰もがその明細書に記載された発明の内容を明確に理解できなければいけない」ということです。このことは、特許の明細書として当たり前のことだと思います。しかし、一人で明細書を書いているとついつい「自分には判るが第三者にはよく判らない表現」を使ってしまうこと等もあるのではないでしょうか?

そこで、小生が心掛けていることをご紹介します。小生はちょっと自信のない表現を使用する時は、先輩、後輩を問わず信頼できる仲間達に「コレって意味判りま すか?」と尋ねるようにしています。「判る」と言って貰えれば良いのですが、「よく判りません」とクビをかしげられたら表現の見直しを行います。小さなことですが、これを行うことで、自分の書いた明細書が当たり前の明細書に近づく気がします。そして、当たり前の明細書を書くことが「高品質な明細書」を提供することの第一歩になるような気がします。

改めまして、当たり前の明細書を書くために協力してくれる信頼できる仲間達に感謝しながら、今年も、お客様や関係者の皆様にご満足頂ける明細書を、誠心誠意、書かせて頂きたいと思っております。今年もどうぞよろしくお願いします。…今年は「高品質な明細書」という都合のよい言葉を使わなくても年始のご挨拶ができました(笑)