商標権の取得前にできること

ピコ太郎さんの「PPAP」が他人によって商標登録出願されたというニュースが盛んに流れています。

なので、今更ながら、他人が出願できるのか、登録されるのか、といった内容は他の方の解説に任せ、ここでは別のことに食いついてみようと思います。

その別のこととは、出願人が音楽会社に「警告を行った」という点です。

そもそも論ですが、権利を持っていない状態で警告ができるのか??

警告自体はどうぞご自由に気の済むまで、限度を越えたら返り討ちにされるかもしれませんが、といったところです。何に基づいて警告を発するかはその人の自由です。

では、産業財産権の世界では、「警告」とは何でしょうか。

特許法や商標法では「警告」という言葉が登場する制度があります。

その制度が「金銭的請求権」(特許の場合は「補償金請求権」)です。

商標の世界では、出願から権利取得までの間に商標に化体した業務上の信用が害されたら出願人の業務上の信用を補塡するために金銭的請求権を認めています。

特許の世界では、出願後1年半経過すると発明の内容が公開され、誰でも実施可能になるので、第三者に自分の発明を実施された場合に出願人の損失を塡補するために補償金請求権を認めましょう、というわけです。

出願人は、未だ権利を取得していない状態でも上記の制度を利用して第三者に「警告」することができます。

そして、一定の要件を満たせば、相手方から金銭の支払いを受けることができます。ただし、金銭的請求権は商標の設定登録後に請求可能ですので、商標権を取得できなかった場合はもちろん請求はできません。

「一定の要件を満たせば」とありますが、ここ大事です。テストに出ます(笑)。

商標の金銭的請求権が認められるためには、大まかに次の要件を満たす必要があります。
(1)出願後、出願の内容を記載した書面を提示して警告をしたこと
(2)警告を受けた者が警告後商標権の設定登録の前に指定商品等について商標を使用したこと
(3)警告を受けた者の商標の使用により出願人に業務上の損失が発生したこと

「PPAP」の件では、(3)の「業務上の損失」が発生していないことが明らかですので、仮に出願人が「PPAP」について商標権を取得したとしても、金銭的請求権は発生しないでしょう。

なので、金銭的請求権の要件の観点からは、出願人の行動は意味がない、と見えます。まあ、出願人本人は金銭を受け取る算段を何か考えているのでしょうけど。

ということで、出願人が権利取得までの間に損失が発生する事態が生じても、泣き寝入りせずにその損失を取り戻せる制度が備わっていますよ、ということです。

逆に、警告を受けたとしても、その警告が正当なものであるのかをしっかり精査すれば怖くないですよ、ということです。

制度としては、正当な権利あっての「警告」です。

(参考その1)
商願2016-108551(出願日2016/10/05) 出願人:ベストライセンス株式会社
商願2016-112676(出願日2016/10/14) 出願人:エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社
商願2016-128344(出願日2016/11/15) 出願人:ベストライセンス株式会社
商願2016-134012(出願日2016/11/28)出願人:ベストライセンス株式会社

(参考その2)
自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
特許庁ウェブサイト
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/tanin_shutsugan.htm