特許・実用新案のQ&A

高速道路で常に一定の車間距離を保つ技術を開発しました。その技術というのは、ドライバーが前車のある部分に着目してアクセル/ブレーキを操作する方法なのですが、これは「発明」になりますか?

発明に該当しません。

特許庁の審査基準では、以下の類型のものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない、となっています。
(1)自然法則自体
(2)単なる発見であって創作でないもの
(3)自然法則に反するもの
(4)自然法則を利用していないもの
(5)技術的思想でないもの
(6)発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの

高速道路で常に一定の車間距離を保つ運転技術は、上記の(5)技術的思想でないもの、特に技能(個人の熟練によって到達し得るものであって、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如しているもの)に該当します。


自社で開発したAIが、画期的な発明をしました。AIの名前を「むぎゅっと1号たん」と言います。
「むぎゅっと1号たん」は時々冗談を言ったりする良い奴なんです。AIは発明者になれますか?

現在の法律では、「むぎゅっと1号たん」は発明者になれません。

学説では、「発明者とは、当該発明の創作行為に現実に加担した者だけを指す」とされています。発明は人間個人の頭脳から生み出されるものです。したがって、「発明者」は必ず自然人です。

ただし、今後、発明者の定義が法律によって規定されるようなことがあれば、AIが発明者となる可能性が無いわけではありません。

なお、会社などの法人は人間ではありませんので、発明者にはなり得ません。

エビとカニがダンスする様子を表現したプログラムを創作しました。
これは実用新案登録できますか?

プログラムそのもの、あるいはプログラムを記憶した記憶媒体は、実用新案登録できません。

実用新案法の保護対象は、物品の形状、構造、又はその組み合わせです。物の形を図面で表現できるものに限られます。実用新案登録出願においても、図面は必須の書類です。

しかし、プログラムを実用新案登録させようと思ったら、できる場合はあります。

それは、プログラムがシステムあるいは装置として構成される場合です。この場合は、物品の構造、又はその組み合わせになりますので、実用新案登録可能です。

では、プログラムをシステムあるいは装置として実用新案登録出願し、無審査で実用新案登録されたところで実用新案権に価値があるかというと、価値はありません。

なぜ、価値がないかというと、実用新案登録されただけでは権利行使ができないからです。

実用新案権に基づいて権利行使するためには、特許庁に実用新案技術評価を請求し、審査官に審査され、肯定的な評価を得る必要があります。肯定的な評価とは、考案が新規性や進歩性等を有するという評価です。特許と同じ審査です。

つまり、肯定的な評価を得た後でないと、権利行使ができません。しかも、肯定的な評価を得るために、権利範囲を減縮する場合があり、権利範囲が出願時よりも狭くなる可能性もあります。その結果、権利行使できたはずが、できなくなることもあり得ます。否定的な評価が出た場合、権利行使はできません。

このように、実用新案では、権利行使するためには結局のところ審査官の審査が必要になり、この点は特許と同じです。しかも、審査レベルは特許と同じで厳しいです。代理人費用も、特許と実用新案はほぼ同じです。なのに、権利行使がほぼ不可能なのです。

だとしたら、初めから特許出願して、審査請求して、審査官に審査され、多少の減縮補正をしたとしても特許査定となれば、特許権に基づいて直ぐに権利行使ができます。

実用新案:登録が先、審査(技術評価)が後。
技術評価請求後、肯定的な評価の場合のみ権利行使可。権利期間は出願から10年。

特許:審査が先、登録が後。
登録後権利行使可。出願中の侵害行為に対して補償金請求権あり。権利期間は出願から20年。

では、実用新案は利用価値が無いのか、というと、全く無いわけではありません。例えば、ライフサイクルが短い製品については、出願と合わせて実用新案技術評価の請求を行えば、出願後3~6か月程度で登録と共に肯定的な評価が得られる可能性があります。この場合は早期に権利行使が可能です。

また、実用新案登録が牽制になる場合があります。出願内容は登録後に公開されますから、新規性を喪失します。他社が特許・実用新案を取得するチャンスを潰すことができます。

プログラムではなく、物の形を実用新案登録するならば、意匠登録することをお勧めます。意匠は特許と同様に、審査→登録→即権利行使可能です。意匠は類似範囲が狭い等と言われますが、デッドコピーは間違いなく権利行使可能です。似ているか、似ていないかは裁判所の裁判官が判断するわけで、警告自体はいくらでもできます。

代理人費用も意匠登録は実用新案登録に比べて低いです。仮に、実用新案と同じ費用で意匠登録するならば、意匠の複数出願が可能になり、意匠の類似の範囲を広げることができます。しかも、意匠登録されれば、即実行可能な権利です。

というわけで、特許で出願できるものは特許出願をお勧めします。物品の形状に特徴があれば、意匠登録出願をお勧めします。